テナントビルのレントロール作成|賃料設定と収支の考え方
テナントビルの収益計画を語るとき、必ず登場するのがレントロール(Rent Roll)です。これは、建物の各区画をどんなテナントに、いくらで貸すかを一覧にした「収入計画表」。事業収支の出発点であり、出口価格の根拠にもなる、開発の要となる資料です。
本記事では、レントロールとは何か、どう作るのか、そして賃料設定と収支をどう考えるのかを、実務目線で具体的に解説します。レントロールを正しく組めるようになれば、テナントビルの収益力を数字で語れるようになります。
レントロールとは何か
レントロールは、建物の各区画(フロア・部屋)ごとに、次の情報を一覧化した表です。
- 区画(フロア・面積)
- テナント用途(店舗・オフィス等)
- 賃料単価(㎡または坪あたり)
- 月額賃料・年額賃料
- 共益費・その他収入
- 想定稼働(空室率)
これを積み上げることで、建物全体の年間収入(GPI:総潜在収入)が算出できます。レントロールは、事業収支の「収入ブロック」そのものです。ここが甘いと、以降の利回り計算も出口価格も、すべて砂上の楼閣になります。
レントロール作成の手順
手順1:フロアごとに賃貸区画を確定する
まず設計(ボリューム)に基づき、各フロアの賃貸可能面積を確定します。共用部を除いた有効面積が対象です。ここでレンタブル比(有効率)が効いてきます。
手順2:フロア別の賃料単価を設定する
商業ビルでは、フロアによって賃料単価が大きく異なります。周辺相場をもとに、フロアごとに現実的な単価を設定します。
| フロア | 賃料単価の傾向 | 設定のポイント |
|---|---|---|
| 1階路面店 | 最も高い | 間口・視認性で単価が変動 |
| 2〜中層階 | 中程度 | 分割自由度で幅広く対応 |
| 上層階 | やや下がる | 眺望・専有性を加味 |
| 地下 | 用途限定で低め | 設備コストと相談 |
手順3:共益費・その他収入を加える
賃料に加え、共益費・看板使用料・駐車場収入・自販機等の副収入を積みます。これらも収益の一部です。
手順4:稼働シナリオ(空室率)を織り込む
満室想定でレントロールを組むのは危険です。現実的な空室率(たとえば5〜10%)を織り込み、さらに開業当初のリースアップ期間(埋まるまでの時間)やフリーレントも見込んでおきます。
賃料設定は「保守的に」が鉄則
レントロールを作るとき、賃料を高めに設定したくなるのが人情です。しかし堅実な計画は逆。賃料は控えめに、空室は多めに見積もります。強気の賃料で埋まらなければ、収支は初年度から崩れます。相場の上限ではなく、「確実に埋まる賃料水準」でレントロールを組むことが、事業を安定させる鍵です。
レントロールは「出口価格」に直結する
レントロールの重要性は、収入計画にとどまりません。完成したテナントビルを売却するとき、投資家は「そのビルがいくらの純収益(NOI)を生むか」で価格を判断します。
具体的には、売却価格 ≒ 年間NOI ÷ 市場のキャップレートで評価されます。年間NOIはレントロールが起点。つまり、説得力のあるレントロールは、そのまま高い出口価格の根拠になります。逆に、根拠の薄い強気なレントロールは、買い手に見抜かれ、出口で評価されません。
テナント構成(テナントミックス)も収益を左右する
どんなテナントを、どう組み合わせるか——テナントミックスも収益と安定性を左右します。1階に集客力のある店舗を配置すればビル全体の価値が上がり、業種を分散させれば景気変動リスクが下がります。単に空きを埋めるのではなく、建物全体の価値を高めるテナント構成を設計することが、賢いレントロール作成です。
まとめ
テナントビルのレントロールは、①賃貸区画の確定 ②フロア別賃料単価の設定 ③共益費・副収入の加算 ④稼働シナリオ(空室率)の織り込み で作成します。賃料は保守的に、空室は多めに。そして、レントロールは事業収支の起点であり、出口価格の根拠でもあります。
説得力のあるレントロールは、収益計画と出口の両方を支えます。まずは自分のビル・土地でレントロールを作り、収益力を数字で確かめてください。